会長挨拶

第49回日本周産期・新生児医学会学術集会
会長 岩下 光利(杏林大学医学部産科婦人科学教室 教授)

我が国の周産期医療が世界的に最高水準にあることはよく知られています。これは、世界に先駆け、我が国で周産期医療を確立されてきた卓越した先人達の活躍と、それを受け継ぎ、周産期医療資源の不足がなかなか改善されない中、周産期医療を発展させてきた医療関係者の並々ならぬ努力の賜物です。本会が周産期専門医制度を運用し始めて以来、多くの若手医師が本会に入会し、現時点で7600人を超える会員数となりました。ことに、周産期医療に興味を抱いて入会する産婦人科医の急増は嬉しい限りです。東日本大震災では、全国34大学から延べ108名の若手産婦人科医がチームを形成し、1週間づつ順次被災地医療施設の周産期医療支援に向いました。各チームは、次のチームのために現地の情報を詳細に発信し、申し送りノートに申し送り事項を次々に記載していきました。被災地支援という熱い思いで一丸となり、大学の垣根を越えて緊密な連携を示したことは周産期医療従事者の結束の固さを物語ると同時に、次世代の周産期医療の担い手たる若手医師のパワーがいかに重要であるかを認識させられました。本会会員の若い人たちが周産期医療に興味を持ち続け、やがては中堅として周産期医療を支えていく立場となるような環境を提供するのが本会の大きな責務の一つと考えます。

本学術集会では若手の会員に焦点を当て、メインテーマを「周産期医学の継承、若者へ」とし、周産期医学の基礎知識を学べるようなプログラムや、若手医師が積極的に学術集会運営に参画できるよう、若手医師達による企画を多数取り入れました。さらに、若い人たちに国際交流に目を向けていただきたいとの思いから、昨年度もお招きしたAsan medical centerのAhm Kim教授に韓国における多胎妊娠の問題についてお話しいただき、国立台湾大学のJin-Chung Shih先生には、癒着胎盤の管理法についてご講演いただく予定です。同じアジアの近隣諸国でも我が国と同じような周産期医療に関する問題を抱えていることを理解していただき、国を超えて周産期をめぐる諸問題に取り組むことで、活発な国際交流に発展していくことを期待しています。同じく、海外での活躍を生きがいとするような周産期医療従事者が育つことを願い、優れた我が国の周産期医療がどのように発展途上国の周産期医療支援に貢献してきたかを、JICAの担当の方からご紹介いただきます。また、世界での周産期医療の潮流の一端を知るべく、世界周産期学会の副会長であるイタリアPerugia大学のGian Carlo Di Renzo教授をお招きし、最新の切迫早産管理について解説していただきます。

田村会長の第48回学術集会と同じく、夏の暑い時期の学術集会ですので、クールビズやTシャツなど、軽装での参加を推奨いたします。リラックスした雰囲気の中で、参加者一人一人が有意義なメッセージを持ち帰えることができる学術集会としたく、関係者一同、鋭意準備にあたっております。会員の皆様には、全国各地から横浜の地にご参集いただけるよう、切にお願い申し上げます。